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映画「アバター」が世界中で空前のヒット中だ。

今流行の3D映画として制作されているので、いずれ観るつもりなら映画館で観ておきたい作品だった。
良い作品は心の栄養になるので最近心の栄養不足になっている自分へのいたわりの為にも、大奮発して家族で観に行った。

当然、3D上映で観なければ意味がない。

娘は初めての3D映画で、すごいすごいを連発していた。
「わっ、とび出して見える!わあーーすごい!!」と隣の席で興奮していた。

ストーリーラインは、ひねりなく、非常にシンプルで素直。
公開される多くの作品に埋もれないように、ほとんどの映画にはキャッチーなひねり=「ウリ」が加えられているが、キャメロン作品にはそれがない。いつも素直でまっすぐなストーリーだ。だからあらすじにしてしまうと、「なーんだ」とあまり期待しないような話に思える。正直言えば私も最初にアバターの広告を見たときにはまったく興味を惹かれなかった。話題作にのし上がってから注目したのだ。
けれど、映画芸術は映像、カメラ、演出、ストーリーの全てが揃ってはじめて評価出来るもの。アバターは間違いなく、映画界の歴史に残る名作だ。
とにかく、設定が芸術的天才的に優れている。素直なストーリーを素直に観客に納得させるのは設定が完ぺきだからだ。観客を感情移入させる天才。それがキャメロン監督だ。好き嫌いは別れるだろうが、名作の一本である事は絶対に間違いない。

3Dの技術にも興味はあったのだが、3Dというだけなら他にも作品はたくさんある。わざわざアバターを選んだのはその作品性の高さに評価が集まっているからだった。アメリカでは保守派の人々がボイコットを訴えるほど、メッセージを強く感じたらしい。自分たち(アメリカ)の過去を痛烈に批判した作品だと保守派には思えるようだ。

私はこの作品に政治的メッセージはないと感じる。ただ純粋に、人は何を重んじて生きるべきなのかを考えさせようとしている。生きるという事は、独立していないこと。命は常にその星の生命全体と関わり循環していること。人のものを奪う事の愚かしさ。無駄に殺す事の痛み。ナヴィという異世界の人間達の姿を借りて伝えようとするのは、自然を崇拝し、魂のつながりを信じ、祈り、他の命と協調しながら生きる人間の在り方。それはネイティヴアメリカンやハワイ先住民族や、アフリカ原住民たち、その他、近代文明に押しつぶされてきた歴史上実存する文化圏の人間のものの考え方、生き方と符合している。だからネイティヴアメリカンから土地を奪い、ベトナムを焼き払った保守派は、自分たちが批判されているのだとカリカリする。
欧米では上映後のエンドロールの時に拍手が上がり、時にはスタンディングオベーションになる場合もあると言う。日本では映画館で拍手する習慣がないのが残念だ。私もエンドロールでは拍手しそうになったし、環境が許すなら是非拍手喝采したかった。そんな作品は多くはない。

環境問題を考えさせる作品は今では星の数ほどもある。森林が焼けていく映像、行き場を失った動物たち、そういう映像も、毎日テレビのどこかの時間帯で目にする事が出来る。だから、私たちはそういう情報や映像に「馴れて」しまいそうになっている。

アバターは、そういう映像に馴れを起こした人にさえ、自然への畏敬、畏怖を思い起こさせる強いメッセージ力を持っている。キャメロン監督は感動的な人物描写の天才だ。そして舞台の描き込みはマニアックの一言。タイタニックの時もそうだったけれど、今回のアバターの世界の描写へのこだわりはものすごい。この美しくも大き過ぎる自然を象徴するのがナヴィたちの暮らす「ホームツリー」と呼ばれる高層ビルに匹敵する巨木だ。大きな木には、私たちは理屈抜きに敬意を感じるものだ。その巨木が、地球人の持ち込んだミサイルで根元から破壊され焼き払われる。このシーンは、森が焼かれるという設定でもよかったはずだが、キャメロンはあえて「巨木=ホームツリー」という設定を選んだ。それは広大な森林よりも、一本の巨木の方が遥かに、失われる事の痛みがダイレクトに観客に伝わると計算づくだからだ。この設定のうまさには本当にうなってしまった。

マニアックな描き込みと、シンボルとしての舞台の選定能力の高さ。そして、必ずそのような最高の舞台の上に、人間の感情が最大のテーマとして描かれる。タイタニックとまさに共通している。自分として生きる事。生かされている事。

3D技術としては、前半部分と後半部分で大きな違いがあった。まず第一に視点の焦点設定の問題。3D映像独特の問題で、映像のどこに照準を合わせるかを作り手が決めるのだが、前半の室内が多いシーンでは観客が焦点を合わせて「見たい」と思うものが散在しているのに、作り手が焦点を合わせている「みるべきもの」は画面中ひとつだけ。それで観客は焦点の合わないものを見て、目がとても疲れてしまう。この問題は、3D映像が解決すべき課題なのだが、映画という媒体ではそう簡単には解決出来ない。理論的な解決方法はすでにあるが、技術とインフラがあと3歩くらい進まないと実現しないだろう。
そして、第二に、カメラが大きく動くシーンや、動きの素早いものが画面の中を移動するシーンで、残像処理が前半では行われておらず、後半では行われていたという差があったことだ。
3時間の大作だが、後半にはその処理が行われていたため、画像が自然で、3Dであることも忘れてストーリーに引き込まれる。

おそらく、後半制作中にその処理を使い始めて、前半部分を作り直し(レンダリングのやり直し)をしなかったのだろう。制作とは、作っている期間が長い場合、その間に新しい技術が生み出されて飛躍的に出来が向上するという事が起こる。その場合、古い技術で作っていた部分を新しい技術で作り直すかどうかは、常に制作コストの問題で非常に悩ましい。作り直せば最高の出来になる事は解っていても、製作時間とコストの問題で、涙をのんで諦めるという事もよくある事なのだ。

こうして技術は向上していく。
同じスタッフが次の作品に携わるときに、間違いなく今回の技術のうちの、最高のものがノウハウとして使われるのだ。

観ておいてよかった。
家族に合わせて日本語吹き替え版にしたのだが、出来ればもう一度英語版で観たいと思っている。

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