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2007年9月2日開始。いつまで続けられるかな?
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彼女はまさに 天使だった。

同じ病室の すべての人の心にある 凍ったものや とがったものを
すべてその身で溶かしてしまうような美しい存在だった。

誰にでも向けられる真っすぐな瞳。
何の垣根もない花がこぼれるような笑顔。
お母さんに会える日には うきうきとしているのが誰が見ても分かるほど
素直な心を何の守りもなく無垢にさらしている彼女。

彼女を見ると 誰もが自分の心に溜まった澱(おり)や傷や汚れを感じずにはいられない。いやそれだけではなく 彼女と一緒にいるだけで 自分の心が美しく洗い流されていく事を感じるのだ。

彼女の容姿がどんなであろうと
その心に何の悪もない事は誰にでもわかる事だった。
彼女はまっしろな紙だった。
透明な空だった。
そしてただ命の限り咲き続ける花だった。

ある晩 いつもなら夜更かしして看護師さんの目を盗んではベッドの中で禁止されているチョコレートを食べる彼女が いそいそと寝支度をしているのに気づいた。

「今夜はもう寝るの?」
私が尋ねると
「うん。明日はね、早起きしないといけないからね。」
病院に居て早起きする何の用件があるのかと少し不思議に思ったが聞きたいラジオ番組でもあるのだろうと気にしなかった。

翌朝 私よりずっと早く起きていたらしい彼女に 朝のあいさつをすると彼女はにっこり微笑んで私に言った。
「見れたよ、見れたよ」
「何を?」
「開くところ」
彼女は病室の窓辺に飾ってある花を指さした。
ユリ科の花が一輪、開いたばかりの若々しい姿で美しく咲いている。

「開く時にね、ぽっ って音がするよ。だから、しーーーーー。静かーに、静かーにしないとね、聞こえない」
口元に指を立て 真剣な目をして教えてくれる。
「ぽっ って。ぽっ っていうよ。」
何度も口まねしてその音を聞かせてくれる。
「じーーーーっと、じーーーーーっと見てないと見られないよ」
まばたきもしないで 目を見開く彼女。

彼女は 知っていた。
彼女だけが 知っていた。
病室に花が開く瞬間を。
そして 花が開く瞬間に 空気を割る音が優しく響く事を。
何時間も、何時間もその瞬間を待って 彼女は優しく真剣に花のつぼみを見つめていたのだ。

ああ なんて
なんてきれいな世界に 彼女は住んでいるのだろう。
私は息をするのを忘れた。

彼女こそは地上にある天使。

彼女は優しいのではない。ただ無垢なのだ。
他人への思いやりに優れているのではない。
ただ生きているだけで その美しさと純粋さで私たちを癒し 
忘れてしまった大切なきらめきを思い出させてくれる。

地上にある天使。
ダウン症の彼女。
永遠の子供。
守るべき 比類なき価値ある存在。

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