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父が夢に出てきた。

どこかの、海の見える岬に立つ、老人介護施設の庭で、父と一緒にいる夢だった。
日差しが暖かく、沖縄の石垣島の記憶とつながっている場所だった。

父は穏やかで、今より少し若い、40代の父だった。
体も健康で、引き締まった体つきで、よく働いていた時代の父がそこに穏やかに暮らしていた。
私は今と同じ私で、父と同じくらいの年齢だった。
そこに暮らしているのか、日常の何気ない会話をその日だまりの庭で話していた。

真っ赤なハイビスカスが咲いていた。
波が崖にぶつかって砕ける音が聞こえていた。
常に私の大好きな海風が吹いていた。

目が覚めて、私は父と対等に話したい事があると気づいた。
穏やかな父なら、その心に届く話が出来るような気がした。


現実の父は、夢の中の父の年齢より20才以上年を取っている。
そしてその20数年を、自分を痛めつけるようにお酒を飲んで過ごした。
私は、父の心に長年、孤独という毒が溜まっている事を知っている。
それを酒でごまかしている事も。

父は、本当はとても穏やかで優しく、むしろ気の小さな人間なのに、
幼い頃から与えられた教育は彼に「男らしさ」を激しく求める。
それが父の人格をゆがめているのを私は知っている。

作られた男らしさや父親らしさなど、父の生来の優しさに比べたら、何程の価値があろうか。
私は父の本当の純粋な優しさを知っている。

酒を飲んだ父の、人格が壊れた様を見るのは辛い。
その優しさが壊れるのを見るのは本当に悲しい。


父の本当の心に、愛している事を伝えたい。
父が、無条件に愛される価値のある人間である事を、彼が生きている間に、知らせたい。

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