トイレにて

ものすごく、どうでもいい話なんですが。

娘とあるショッピングモールのトイレに入りました。
個室をのぞいた娘が　「ここ、流れてないからいやだ」と言って、
別の個室を選びました。
「あらそう？」と私は流れていないという個室をちらっとのぞいて
その個室の隣に入りました。
するとその直後、足音がしてきて、となりの個室に誰か入ったのが
わかりました。そしてその人は、流れていないはずのトイレを、流
すことなく、その便座に腰を下ろした音がしました。

内心「へえ〜流れていないトイレでも全然気にしない人はいるんだ
なあ」と、少々驚きつつも、まあ、そういう人もいるんだろうと思
っていると隣から、紙を取る時のカラカラというトイレ独特の音が
してきます。私は立ち上がって自分のトイレを流して、個室を出ま
した。娘はまだ個室です。
直後、隣のトイレから若くてきれいにお化粧したお嬢さんが出てき
ました。いわゆる「お嬢系」のキラキラ派手目な人です。その人は
私とすれ違い、洗面台の前で自分の顔と、服の端々を一心にチェッ
クしはじめました。私はそれを横目に、まだ個室の中の娘に「おー
い、ママはもう出たよ、大丈夫？」と声をかけながら、ふとある事
に気付きました。

この人が個室から出た時に、聞こえるべき音が聞こえなかった、と
いう事。
そうつまり、水を流す音です。

その疑惑から本当に本能的に、その人の出た後の個室をチラとみて
しまいました。そして、みてはいけないものを…。

そう、その人は、自分のした後のトイレを流していなかったのです。
自分以外の人がした後を気にせず、その上に自分が用を足して、さ
らに自分の後を流さずにトイレから出る人に、私は初めて遭遇してし
まったのでした…。

そしてさらに。
この人はトイレから出るなり、洗面台にまっしぐらでしたが、一向
に手を洗おうとしないのです。そのままの手で、顔でも目でも髪で
も触っています。

娘と添えつけの水せっけんで手を洗って流す間、彼女は熱心に自分
の服や前髪の形や目の周りのアイラインを直したりチェックしたり
していましたが、ついに立ち去るまで、手を洗うことはなかったの
です。


いや…ほんとうに…どうでもいい話なのですが…。
彼女がどうであれ、ほんとうに、どうでもいいのですが…。

ザ・無頓着。　という称号を彼女にあげたいと思います。


追伸：トイレが故障していて、流れなかったのだという可能性も考
えました。しかし残念ながら、彼女が去った後、私が代わりに流し
てあげた時には正常でした。
おそらく普通は、「彼女が水を流した音がしない」だなんて事に気
付く人はそんなに居ないのだと思います。気付かなくてもいい事に
気付くというのも、ある意味ではその分人生を複雑にします。