2007年9月2日開始。いつまで続けられるかな?
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ようやく 少しづつ 仕事が手につき始めたような感じ。
調子がいい時と比べると 速度も効率も 100分の1くらいだけど。
ちょっとづつ、心の痛みも引いているような。
すると やっと 一つ気づいた。
今回の不調の引きがね。
それは1週間ほど前。
夜の講座が終わり、くたくたになって、さあ、今からやっと晩ご飯を食べようかなと思っていた、夜の9時過ぎ。
NPOの電話が鳴った。この時間の電話はもう取らなくてもいいのだが、坂本が出た。
そしてすぐに、私に代わってくれと言う。この番号には、不特定多数の人から話しを聴いて欲しいと電話がかかってくる。夜に鳴る時には大抵が、かなりひどい状態の人の場合が多い。相手は、やはりそういう感じの人だという。精神障害がある、と自分で言っているのだそうだ。「疲れてるから代われない。今はそういう対応は出来ないから、断って」と頼むと、「断れないから代わってと言ってる」と坂本。
つまり、自分がどうやって断ればいいのかわからないので、私にそれをしてくれと坂本は言っているのだ。
もう、どうしてこんなに疲れている時にまで…と泣きたい気分で電話に出る。
相手は確かに精神病の人特有の感じの話し方で、延々と自分の事を話している。
困っている。死にたい。どうして誰も助けてくれないんだ。自分だって自分で出来る事は何でもしてきた。でも誰も助けてくれない。役所に行ってもあしらわれる。ボランティア団体に言っても助けてくれない。もう今死のうと思っている。
そう言って、自分の窮状を訴えてくる。
諦めて、しばらく話を聴いてみることにした。
彼は、今所持金が300円しかなく、どこにも行けず困っているのだそうだ。
故郷の長崎に帰って、本籍地なら生活保護を申請出来ると市役所の人に言われ、帰りたいのだという。けれど高速バス代がない。助けて欲しい。絶対に返すから。
どうして、人を助ける活動をしているという処に、いくらかけても、誰も僕を助けてくれないんですか。僕は本当に、長崎に帰らなければもう生きて行けないんです。どうしてお金をかしてくれないんですか。NPOやボランティア団体の人は、どうしてそんなに冷たいんですか。
僕は生きようとしているんだ。それなのに、どうして助けてくれないんですか。
夜の10時近くである。外は寒い。
所持金300円で、公衆電話から、必死にお金をかしてくれる処を探してかけているのだという。
長崎までいくらかかるの?と聞いた。
6000円くらい。
それだけでいいから、貸してください。きっと返します。
分かりました。
それじゃあ、NPOからそれを貸す事はできないから、私が個人的にあなたに貸します。
今、助けに行くから、そこで待っていて。
そう答えた。
坂本は大反対だった。もともとまったく今月の生活費が足りなさそうという状況で、見ず知らずの人にお金を渡しにいく事に大反対だったのかも知れない。私には、このケースはそうせざるを得ない、という個人的な信念があった。
出掛けに坂本がキレて、大げんかになった。子供に八つ当たりしそうだったので、子供を連れて、逃げるように家を出た。
天神で彼は震えながらちょこんとベンチに座っていた。
私が「助けに来たよ」というと、ありがとうありがとうとすがるように何度もお礼を言い、電話ですでに聞いた話をまた一気にまくし立て始めた。
長崎行きのバスの最終は11時ごろだという。
彼に紙に包んだお金を渡した。旅費だけでは食べるにも困るだろう。一万円包んであった。
彼は、私の名前や住所を聞いてきた。
私は言わなかった。
「このお金は、あなたにあげます。いろんな処で、相手にしてもらえず、これからも嫌な思いをするでしょう。でも、生きる事を諦めないでがんばってね」
彼は、何度もお礼を言いながら、バスセンターに消えて行った。
彼の話は、嘘かも知れないとも思った。
バスに乗って、長崎に帰るという話。
それでもいいと思った。
彼は、お金がないと今が生きられないのだろう。
教会がやっているホームレスの支援団体にまで足を運んだそうだ。それでも断られたのだそうだ。
彼の話は嘘かも知れないが、彼が生きようとして必死な事だけは、本当だった。
そして「何故、誰も僕を助けてくれないんだ」という訴えだけは、本当だった。
「僕は生きようとしているのに!」という叫びも、本物だった。
だから助けようと思った。
誰も助けてくれない、と叫ぶ彼が哀れだった。
四川省の地震、ミャンマーのサイクロンで被害に遭っている人々が、頭をよぎった。
何度も。今遠くで命をつなごうと頑張っている人々。その人が目の前にいたら、助けるだろう。
そして、今、同じように、命をつなごうとして救いを求め続けた人が目の前に現れた。
四川やミャンマーの人を助けるのと、今、目の前にいる精神障害の人を助けるのは同じだ。
命を救っている。
彼が私を騙しているなら、騙されてあげようと思う。
彼が生きる為にそれをしているのは明らかだからだ。
私の手元にお金が無くなっても、私にお金を貸してくれる人はいるだろう。
でも彼にお金を貸してくれる人は他にいないのだ。
精神障害者として生まれ、彼は彼の人生で大きな修業をしているのだろう。それを全うして欲しい。だから、今の一瞬を生き続けるために必要なものをあげた。
坂本が荒れ狂っているだろう家には、帰りたくなかった。
安全な家だけが、私の家だ。
しばらく、娘と夜のドライブをした。
くたくたの体と心を休める場所は、車の中しかなかった。
あれが、私のトラウマに触れたのだろう。
あの夜の事が、私の不調の引き金になった。
調子がいい時と比べると 速度も効率も 100分の1くらいだけど。
ちょっとづつ、心の痛みも引いているような。
すると やっと 一つ気づいた。
今回の不調の引きがね。
それは1週間ほど前。
夜の講座が終わり、くたくたになって、さあ、今からやっと晩ご飯を食べようかなと思っていた、夜の9時過ぎ。
NPOの電話が鳴った。この時間の電話はもう取らなくてもいいのだが、坂本が出た。
そしてすぐに、私に代わってくれと言う。この番号には、不特定多数の人から話しを聴いて欲しいと電話がかかってくる。夜に鳴る時には大抵が、かなりひどい状態の人の場合が多い。相手は、やはりそういう感じの人だという。精神障害がある、と自分で言っているのだそうだ。「疲れてるから代われない。今はそういう対応は出来ないから、断って」と頼むと、「断れないから代わってと言ってる」と坂本。
つまり、自分がどうやって断ればいいのかわからないので、私にそれをしてくれと坂本は言っているのだ。
もう、どうしてこんなに疲れている時にまで…と泣きたい気分で電話に出る。
相手は確かに精神病の人特有の感じの話し方で、延々と自分の事を話している。
困っている。死にたい。どうして誰も助けてくれないんだ。自分だって自分で出来る事は何でもしてきた。でも誰も助けてくれない。役所に行ってもあしらわれる。ボランティア団体に言っても助けてくれない。もう今死のうと思っている。
そう言って、自分の窮状を訴えてくる。
諦めて、しばらく話を聴いてみることにした。
彼は、今所持金が300円しかなく、どこにも行けず困っているのだそうだ。
故郷の長崎に帰って、本籍地なら生活保護を申請出来ると市役所の人に言われ、帰りたいのだという。けれど高速バス代がない。助けて欲しい。絶対に返すから。
どうして、人を助ける活動をしているという処に、いくらかけても、誰も僕を助けてくれないんですか。僕は本当に、長崎に帰らなければもう生きて行けないんです。どうしてお金をかしてくれないんですか。NPOやボランティア団体の人は、どうしてそんなに冷たいんですか。
僕は生きようとしているんだ。それなのに、どうして助けてくれないんですか。
夜の10時近くである。外は寒い。
所持金300円で、公衆電話から、必死にお金をかしてくれる処を探してかけているのだという。
長崎までいくらかかるの?と聞いた。
6000円くらい。
それだけでいいから、貸してください。きっと返します。
分かりました。
それじゃあ、NPOからそれを貸す事はできないから、私が個人的にあなたに貸します。
今、助けに行くから、そこで待っていて。
そう答えた。
坂本は大反対だった。もともとまったく今月の生活費が足りなさそうという状況で、見ず知らずの人にお金を渡しにいく事に大反対だったのかも知れない。私には、このケースはそうせざるを得ない、という個人的な信念があった。
出掛けに坂本がキレて、大げんかになった。子供に八つ当たりしそうだったので、子供を連れて、逃げるように家を出た。
天神で彼は震えながらちょこんとベンチに座っていた。
私が「助けに来たよ」というと、ありがとうありがとうとすがるように何度もお礼を言い、電話ですでに聞いた話をまた一気にまくし立て始めた。
長崎行きのバスの最終は11時ごろだという。
彼に紙に包んだお金を渡した。旅費だけでは食べるにも困るだろう。一万円包んであった。
彼は、私の名前や住所を聞いてきた。
私は言わなかった。
「このお金は、あなたにあげます。いろんな処で、相手にしてもらえず、これからも嫌な思いをするでしょう。でも、生きる事を諦めないでがんばってね」
彼は、何度もお礼を言いながら、バスセンターに消えて行った。
彼の話は、嘘かも知れないとも思った。
バスに乗って、長崎に帰るという話。
それでもいいと思った。
彼は、お金がないと今が生きられないのだろう。
教会がやっているホームレスの支援団体にまで足を運んだそうだ。それでも断られたのだそうだ。
彼の話は嘘かも知れないが、彼が生きようとして必死な事だけは、本当だった。
そして「何故、誰も僕を助けてくれないんだ」という訴えだけは、本当だった。
「僕は生きようとしているのに!」という叫びも、本物だった。
だから助けようと思った。
誰も助けてくれない、と叫ぶ彼が哀れだった。
四川省の地震、ミャンマーのサイクロンで被害に遭っている人々が、頭をよぎった。
何度も。今遠くで命をつなごうと頑張っている人々。その人が目の前にいたら、助けるだろう。
そして、今、同じように、命をつなごうとして救いを求め続けた人が目の前に現れた。
四川やミャンマーの人を助けるのと、今、目の前にいる精神障害の人を助けるのは同じだ。
命を救っている。
彼が私を騙しているなら、騙されてあげようと思う。
彼が生きる為にそれをしているのは明らかだからだ。
私の手元にお金が無くなっても、私にお金を貸してくれる人はいるだろう。
でも彼にお金を貸してくれる人は他にいないのだ。
精神障害者として生まれ、彼は彼の人生で大きな修業をしているのだろう。それを全うして欲しい。だから、今の一瞬を生き続けるために必要なものをあげた。
坂本が荒れ狂っているだろう家には、帰りたくなかった。
安全な家だけが、私の家だ。
しばらく、娘と夜のドライブをした。
くたくたの体と心を休める場所は、車の中しかなかった。
あれが、私のトラウマに触れたのだろう。
あの夜の事が、私の不調の引き金になった。
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